上司のヒミツと私のウソ
 だが、ボールペンを背広の胸ポケットにしまって立ち上がったときには、やんわりとほほえんでいた。


「つらい立場なんはわかるけど、西森さんが企画部を離れることが彼女にとってほんまにいいことなんかどうかは俺にはわからん。こっちは大歓迎やけどな」


 でもなあ、と考えこむように会議室の白い蛍光灯を見上げる。

「異動させたくらいでうわさがおさまるともおもえんけどな。女ども、けっこう悪辣やで」

「これ以上ひどいことはさせませんよ」


 ずっと考えていた。

 松本のことは、西森にとっては好都合だったともいえる。

 俺が社内の誰かと付き合えば、もううわさに悩まされることもない。もし、西森がそうなることを期待してあのふたりに協力したのだとしたら……やっぱり、少し気持ちが沈む。


「ま、がんばれや」


 会議室を出るとき、本間に背中を叩かれた。

 おもしろがっているようでもあり、心配しているようでもある。軽そうなのに信頼できる。妙な男だなとおもった。
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