上司のヒミツと私のウソ
「今さらもう遅いけど、普通は年齢といっしょに少しずつ、気持ちを開放したり隠したりする方法を覚えていくんでしょ。私にはそれが身についてないんだよね」


 それともこれは、別人になりすましてたくさんの嘘をついてきた報いだろうか。

 父や母や、身近な人の傷ついた顔を見るのが怖くて、いつも自分の気持ちに気づかないふりをしてきた。

 でも、そうやってひとつ嘘をつくたびに、自分自身を傷つけていたのかもしれない。あとになって、その傷がじくじく痛みだすとも知らずに。


 地面にめりこむのではないかとおもうくらい、落ちこんできた。


「三十年も、なにやってきたんだろ」


 自分だけが、無駄に時間を費やしてきたようにおもえる。

 生きることは残酷だ。とり返しがつかない。

 後悔するときはいつだって手遅れだ。

 それ間違ってるよって、もっと早く、誰かが指摘してくれてもよかったのに。


「一生懸命生きてきたんじゃないの。あんたのことだから」


 気づくと安田が隣のダンボールに腰かけていた。私と同じように、やっぱり少しお尻がめりこんでいる。
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