上司のヒミツと私のウソ
 目の前に積み上げられたチラシを指でもてあそぶようにパラパラめくりながら、安田はさらにいった。


「三十だから賢い女じゃないとだめってことないでしょ。別に今からでも、身につけるのは遅くないとおもうし。私たちあと何十年生きてくとおもってんの。三十やそこらで人生終わったみたいなこといわないでよ。こっちまで落ちこむじゃん」


「……安田って誕生日いつだっけ」

「十二月。まだ二十九だからね」

「こうして見ると安田ってけっこう童顔だね。今まで化粧が濃すぎて気づかなかった」

「その話、いま関係ある?」

「……ないです」


 安田は立ち上がって、両手でスカートの後ろを豪快にはたいた。


「あんたと最初に会ったとき、この年で必死になっちゃってバカみたいだとおもった。でも、それも悪くないなって最近はおもう。どう生きるかなんてひとそれぞれでしょ。ババくさいこといってないで、西森は今までどおりやればいいの。わかった?」


 安田の右手が伸びてきて、私の二の腕をつかむ。ぐいと強い力でひっぱり上げられた。
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