上司のヒミツと私のウソ
翌日、律子さんから電話がかかってきた。
「昨日はごめんね、お店手伝わせちゃって」
私と矢神が店を出た直後に帰ってきた律子さんは、マスターから話を聞いて仰天したらしい。
「まさかそんなことになってたなんて。お礼にご馳走したいから、店が開くまでに来てくれないかな。昨日のバイト代も渡したいし」
「そんなの、いいです」
「だめよ。そういうことはちゃんとしなきゃ」
律子さんが頑固にいいはって譲らないので、四時過ぎにあすなろに出かけた。
店はまだ準備中にもかかわらず、律子さんとマスターが私のために料理を用意して待っていてくれた。今日も外はカンカン照りで、店の中は適度に効いた冷房が涼しくて心地いい。
「ほんとうに悪かったわね。でも、おかげですごく助かったみたい」
「いえ、そんな」
カウンター席に腰掛け、目の前にずらりとならんだ大好物メニューの数々にわくわくしながら箸を手にとった。