上司のヒミツと私のウソ
月曜も火曜も、安田とふたりで居残って残業した。
宣伝企画課のほかのメンバーたち、佐野くんと三好くんと和田くんは、二日とも私たちに声もかけずに定時退社してしまい、あろうことか矢神まで私たちふたりを置いてけぼりにして早々に帰宅した。
安田はまったく気にしていないようだったけれど、私はがっかりした。
たった数日で、しかもふたりでできることには限界がある。今回は、なぜか頼みの広告代理店がまだ決まっていないのだ。
「早く決めてもらわないと困るのよね。なに考えてんだろ。明日のミーティングで本間課長を問いただしてやろう」
安田はぶつぶついいながら、私がメール添付で送った二つめの企画案の最終チェックをしている。
執務室の壁時計の針は十時になろうとしていた。フロアは夜の静けさに沈みこみ、残っているのは私と安田と販売企画課の女性社員、秋田さんの三人だけだ。
「ねえ。やっぱり『べにしずく』は和のイメージなのかな」
私は出来上がった企画案を眺めながらつぶやいた。