上司のヒミツと私のウソ
 車がカーブするたび、徐々に体重がこちらに移ってくる。右の肩に感じるやわらかな重みとともに、西森の熱が全身で脈打つように伝わってくる。


「ここ、どこ」

 眠っているのかとおもったら、急に目を開けて聞いてきた。


「まだ会社の近くだ」

 ふたたび目を閉じ、よく聞きとれない声でなにかぶつぶつつぶやいた。


「夢か現実か、わかんなくなってきた」

 そんなことをいっている。本人はひとりごとのつもりらしい。


「現実だ。家に着くまで夢を見るのはもうちょっと待て」


 運転手が駅前でいいんですか、と聞いている。

 西森は目を閉じたまま、軽くゆすっても起きない。呼吸が深くなっていた。


「西森、おい」

 どうするんですか、と運転手がいらだちはじめる。
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