上司のヒミツと私のウソ
 俺は西森が目を覚まさないことに焦り、携帯電話をとり出して『あすなろ』の番号を押した。律子さんが慌ただしいようすで電話口に出た。そろそろ店が閉まる時間だ。


 事情を説明して、今からそっちへ向かってもいいかと聞くと、律子さんは「なんで?」と問い返してきた。


「いま説明したじゃないですか。西森の家がわからないんですよ。とりあえず今夜はそっちに泊めてもらって……」

「だから、なんでそんな面倒くさいことする必要があるの?」

「は?」

「矢神くんの部屋に泊めればいいでしょ」


 律子さんは当然とでもいわんばかりに、あっけらかんといい放った。


「そういうわけにもいきませんよ」

「なんで? 華ちゃんはあんたの大事な部下で、モトカノでしょ? 問題ないでしょ?」

「……あのなあ先生」


 電話の向こうでくすりと笑う声が聞こえた。
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