上司のヒミツと私のウソ
 だが、うろたえたハルは一日に何度も俺を病院に連れていき、しまいには、そんなに何度も連れてこなくても大丈夫ですから、と医師に叱られていた。


 あのときのハルのうろたえぶりを、笑えなくなったなとおもう。


 ふいに西森の目が開いた。

 天井を見ていた空ろな目が、現実のいろを宿しながらゆっくりとこちらを向く。じっと俺の顔を見つめて、「どうしてここにいるんですか」と聞く。


「俺ん家だから」


 西森はぐるりと薄暗い部屋の中を見回して、眉間に皺をよせ、わけがわからないといった顔をした。

 熱のせいで顔は火照り、息づかいは苦しそうだ。


「まだ朝じゃないから、寝てていいぞ」

「課長は寝ないんですか……?」

「西森が寝たら、寝る」


 まだ、なにか探りたらないように俺の顔を見る。物怖じしない赤ん坊のように、まっすぐでぶしつけな視線をぶつけてくる。
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