上司のヒミツと私のウソ
 みんな、服装はもとよりメイクやアクセサリーもばっちり決まっている。まるで値踏みするように私を見る彼女たちの視線に戸惑った。

 私の企画を気に入ってくれたという谷部長は強面の怖そうな人で、私の自己紹介をニコリともせずに聞いていたかとおもうと、朝礼が終わるや否やさっさと鞄を手にして出て行った。


 大歓迎されるとはおもっていなかったけれど、なんだか不安になる。

 私がここに来ることを、企画部の人たちは誰も望んでいなかったのかもしれない。矢神だけじゃなく。


「よしっ」


 マイナス思考を打ち消すために、私は気合いを入れた。

 上着を脱いで、パイプ椅子の上にたたんで置いた。


 ついでにパンプスも脱ぐ。

 ブラウスの袖を肘の上までまくり、ハンカチをマスク代わりにして後頭部で結んだ。
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