上司のヒミツと私のウソ
 見上げると、いまいましいほど爽やかな秋空がひろがっている。

 リダイヤルをやめて『あすなろ』にかけなおすと、すぐに律子さんが出た。あら矢神くん、とのん気な声が答える。


「西森と連絡がつかないんですよ。ほんとうに俺のマンションにはいなかったんですか」


 律子さんが不機嫌な声を出す。

「私が嘘つくわけないでしょ。わざわざ買い物していったのに、誰もいないんだもん。がっかりよ。買いこんだ食材、ぜんぶ冷蔵庫に押しこんできたからね。腐らせちゃだめよ」


「そんなことより、西森がどこにいるか気にならないんですか」

「どこって……自分の家に帰ったんじゃないの。もう熱は下がってたんでしょ」

「電話に出ない」

「寝てるんじゃない? そんなに心配しなくても、華ちゃんだって自分の面倒くらい自分で見られるわよ。子供じゃないんだから」


 返す言葉がない。

 電話を切り、錆びついたパイプ椅子に腰掛けて煙草をとり出した。
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