上司のヒミツと私のウソ
「大丈夫か」

 西森はびっくりしたように、つかのま言葉をなくし茫然と俺を見ていた。が、すぐに完全無欠の笑顔に変わる。


「少しふらふらしますけど、平気です」

 店の中が暗いのではっきりわからないが、表情も顔色もいつもと変わりないように見え、声もしっかりしていた。


「二次会、課長も行きますよね。場所どこですか?」

 そういってなにげなく壁に手を添えた。体を支えるように歩き出す。


 店を出ると、さっきまでいた企画部の顔ぶれはどこにも見えなくなっていた。すでに移動してしまったらしい。


 西森がふらふらと通りの真ん中に出ようとしたので、とっさに腕をつかんだ。金曜の夜、駅前通りは飲み会帰りのサラリーマンで溢れている。

 すばやく西森の背中に腕をまわして、ひと通りの少ない路地に移動した。
< 541 / 663 >

この作品をシェア

pagetop