上司のヒミツと私のウソ
 風邪でダウンして上司に面倒をかけてしまっただけでも十分恥ずかしいのに、あろうことかおんぶしてもらって部屋に泊めてもらってベッドを横どりして、矢神のプライベートにずかずか踏みこんでしまった。

 しかも、その前にバレンタインの日のことをあからさまに愚痴った気がする。せめて愚痴の部分だけでも抹消したい。


 ひとしきり羞恥に身もだえしたあと、おそるおそる起き出して寝室を出た。


 なんとなく、モノトーンのシャープなインテリアが揃う都会的な部屋を想像していたのだけれど、部屋の雰囲気はまったく想像と違っていた。


 電気製品を除けば、家具はほとんどが木製のものばかりだった。


 よく見ると、最近のデザインの家具の中に、あきらかに古い家具がまざっている。とはいえ、アンティークと呼ぶほどではない。せいぜい二十年から三十年くらい前の、子供の頃どこの家庭でも見かけた普通の家具だ。
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