上司のヒミツと私のウソ
 くるくるした明るい色の髪といい、露出度の高い薄手のワンピースといい、どう見ても二十歳かそこらにしか見えない。スタイルもよくて、ファッション雑誌に出てくるモデルのようだ。


 髪はブラシで梳かしただけ、ろくに化粧もしていない血色の悪い老け顔を見られるのが恥ずかしくなって、私はうつむいた。

 彼女はスパンコールのきらめくミュールを脱いで、さっさと部屋に上がりこむ。


「もしかして前の彼女さん?」


 長い髪を揺らして振り返り、いぶかしむような目で私を見た。マスカラの乗った長いまつげが、まばたきするたびにパタパタ揺れる。


「……違います」

「じゃあ、どうして庸介さんの部屋にいるんですか?」

「会社の……会議に必要な書類を、課長の代わりにとりに来たんです」


 とっさについた嘘にしては上出来だとおもった。

 できるだけ自然に振る舞ふるまおうとしたけれど、声には覇気がなく、かすれているうえに鼻声で、みじめな気分になった。一気に熱がぶり返した気がする。
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