上司のヒミツと私のウソ
「どうもありがとうございます。倉庫の片付けをするには動きやすい服装のほうがいいとおもいまして。これなら少しくらい汚れても平気ですから」

「それは頼もしいですね。はりきっているところを邪魔しては悪いので、終わるまで倉庫には誰も立ち入らないように注意しておきましょう。それじゃ、がんばってください」


 終始にこやかにいい、矢神はくるりと私に背を向けて執務室に消えていった。


 私は廊下を突進して倉庫へ向かった。

 今日はスニーカーだから靴の踵は鳴らない。


 倉庫のドアの鍵穴に鍵を差し込み、荷物が散らかったままの薄暗い部屋の中に入ってドアを閉めた。


 矢神は私を部内で孤立させる気だ。


 昨夜だって、もし安田が呼びに来なかったら、私はひとりで作業を続けていた。


 歓迎会とは名ばかりで、自分たちだけで飲んで盛り上がりたかったとしかおもえない。一日中倉庫の片付けをしていた私のことを、内心ではわらっていたのかもしれない。


 ポケットからヘアゴムを出して髪をひとつに束ね、シャツの袖をまくった。

 昨日運び込んだ段ボール箱をふたたび廊下に出すと、脚立にのぼって天板の上のものを降ろしていく作業にとりかかる。
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