上司のヒミツと私のウソ
 むかしからそうだった。私のつまらない冗談にも、心から楽しそうに笑ってくれる。


「ミサコちゃん、ほんとうに幸せそう。よかった」

「華ちゃんは? いいひといないのかい」


 おじさんにひやかされ、私は笑ってごまかした。するとおばさんが「あわてて結婚する必要ないわよ」という。


「美砂子が出ていったとたん、家の中が急に静かになっちゃって。華ちゃん、今度遊びに来て」

「そういえば、仕事のほうは順調なのかい? 美砂子から聞いたよ。企画が採用されてがんばってるって」

「華ちゃんは、昔から好奇心が旺盛だったものね」

「そうそう。それに美砂子と違って図工や作文が得意で」

「夏休みの自由研究ですごく凝った壁新聞を作って、先生に褒められたこともあったわよね」

「よくそんなの思いつくなあって、いつも感心してたんだよな」


 ふたりはつぎつぎと思い出を語り出す。

 私でさえ覚えていないような遠い昔のことを、心からうれしそうに。
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