上司のヒミツと私のウソ
「華ちゃん、遊びに来てね」

 おばさんはしんみりした口調になって、さっきと同じ台詞を繰り返した。


「華ちゃんの好きなドーナツ作って待ってるから。美砂子が家を出たら、もううちによってくれないんじゃないかって、ちょっと淋しくおもってたのよ」

「またそんなこといって。自分の家が隣にあるっていうのに、華ちゃんだって迷惑だよなあ」


 私はかぶりを振って、「そんなことないよ」といった。


「私にとってはあの家がほんとうの……」


 笑おうとしたのに、ふいに涙がこみあげた。


「私……ミサコちゃんの妹になりたいって、むかしからずっとそう願ってた」

「なにいってるの」


 おばさんのふくよかな手が、私の肩を包むようにやさしく抱いた。

 子供の頃、わけもいわずにひとりで泣いている私を、いつもそうして抱きしめてくれたように。


「私たちは華ちゃんを娘だとおもってきたし、これからもそうよ。だから美砂子がいなくなっても、遠慮なんかしなくていいのよ」
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