上司のヒミツと私のウソ
 泣き出してしまった私をあやすように、おばさんの手が私の頭を撫で、背中を撫でる。

 あたたかい手はいつも私の胸の痼りを溶かし、凝り固まった頑なな心をいとも簡単に砕いてしまう。


 どうして気づかなかったんだろう。

 私はずっと、こんなにも長い間、このひとたちに見守られていたのに。


 実の親でなければ意味がないなんて、そんな幼くて傲慢な理由でふたりの愛情を無意識に拒んできたことを、私は激しく後悔した。


「……ごめんなさい」


 いいのよ、とおばさんはやさしくなだめた。

 謝罪の理由を、おめでたい日に泣いてしまったことだと誤解しているようだ。


 もう大丈夫、と私は心の中でふたりに約束した。


 これからは、ちゃんと、自分で自分を育てていける。


 私は涙をぬぐって笑った。

「ミサコちゃんと写真を撮ってくるね」


 ふたりに手を振ってその場を離れ、大勢の友人に囲まれて写真を撮っているミサコちゃんのところへ行った。
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