上司のヒミツと私のウソ
 お祝いの言葉を贈ろうとしたら、逆にミサコちゃんから「幸せになってね」といわれてしまった。

「それ、私の台詞」

 いい返すと、ミサコちゃんの心配そうな視線とぶつかった。


「華には幸せになってほしいもん」

 ぽん、と私の頭に手をのせる。


「もういいんじゃない。自分の幸せを素直に信じても」

 どういう意味なのか聞こうとしたら、花嫁は青いワンピースを着た女の子に手を引かれて離れていってしまった。




 私は席についたまま大きく伸びをして、背中を後ろにそらした。

「矢神課長、直帰するって」

 電話を終えて受話器を置くと、安田がいった。

 私はほっとしているのを悟られないように、そっけなく「あ、そう」と答える。


 フロアに残っているのは、またしても私たちふたりだけになっていた。

 今日は金曜で、送別会の夜から二週間が経っていた。


 この二週間、矢神とは、仕事の報告以外ではほとんど口をきいていない。

 何度か、矢神から話があるというようなことをいわれたのだけれど、ふたりきりになるのが怖くて、その都度ごまかしたりとぼけたりして逃げている。
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