上司のヒミツと私のウソ
 安田はもう愛想がつきたのか、あれ以来なにもいわなくなった。

 このままでいいわけがないとわかっているけれど、どうすればいいのかわからない。

 ほんとうに、わからない。

 私がのろのろとデスクの上を片付けていると、安田が私を見た。


「福原さん、あれからなにかいってきた?」

 私はかぶりを振った。

 安田は「そう」といって、部屋の中を見回したり窓の外を見たり、なんとなく居心地が悪そうにしている。


「帰らないの?」

 私が聞くと、安田は「あー。んー。もうちょっと、かな」と歯切れの悪い返事をした。

 しかたなく、私も仕事を続けることにする。


 三十分ほど経った頃、安田がしきりに時計を気にし始めた。


「約束でもしてるの?」

 私がそういったとき、突然、安田がパソコンの電源を落として立ち上がった。

「じゃあ、先に帰るね」
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