上司のヒミツと私のウソ



「懲りないひとだね」

 安田がいった。


 あふれていた資料や荷物が取り除かれると、書棚は本来の整然とした姿にもどった。

 どれも年季の入った古い資料ばかりだったけれど、きちんと年代順に並べられている。


「ああ、この資料こんなところにあったんだ。先月さんざん探したんだよね。もっと早く片付けてくれたら助かったのに」


 書棚を眺めて歩きながら、安田が無責任なことをつぶやく。


 安田が倉庫にやってきたのは午後七時過ぎ。昨日同様、帰り支度万全という格好だ。

 それなのに安田はもう十五分もここにいる。私は安田の存在を無視し、脚立にのぼって棚の雑巾がけを続けていた。


「ねえ、なんか怒ってるみたいだけど、そんなに嫌なら人事部にもどれば? 今なら誰も文句はいわないとおもうけど」

「誰になんといわれようと、もどるつもりなんかない」

「へえ。どうして?」
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