上司のヒミツと私のウソ
「もういいでしょ。邪魔するんなら出てってよ」

「なあに、ひとがせっかく励ましにきてあげたのに」

 どこがですか。

「私が片付け終わるまで倉庫は立ち入り禁止だって、矢神にいわれてるでしょ」

「そんなこといわれてないけど」


 私は雑巾がけを続けようとして、もう一度安田を振り返った。


「でも、今朝……」


「あのね。あんたが昨日からずっと倉庫の片付けやってるなんて、誰も知らないの。いきなりそんな格好で出社してきて、みんな驚いてたくらいよ」

「……」


 どういうことだろう?

 矢神が話していないということ? なぜ?


 でも、それなら昨夜のみんなの態度も納得がいく。誰も私を呼びにこないはずだ。


「すぐ音を上げるかとおもったのにな。おばさんのくせに無理しちゃって」

「誰がおばさんよ。そっちだって変わらないくせに」


 安田は私と一年しか違わなかったはずだ。でも、安田は余裕の顔つきでふふんと笑う。

「私はまだ二十九。二十代はお姉さん、三十代はおばさん。この差は大きいよねー」


 安田の相手をしているのがばかばかしくなってきた。
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