上司のヒミツと私のウソ
 迷わずいい切る安田に、そのとき私はなぜか激しい劣等感を抱いた。

「無責任なこといわないでよ。なにも知らないくせに」

「まあね。どうせ他人事だもん」


 でも、私が倉庫にいることを、安田だけは知っていた。矢神は安田には教えたのだ。




 安田と二人で倉庫を出たときには、午後九時をまわっていた。

 悔しいけど、安田が手伝ってくれたおかげで作業はすこぶるはかどった。安田はファイルの表紙やカタログの一部を見ただけで、使う、使わないを即座に判断し保管場所を指示してくれた。


 私は執務室にコートとバッグを取りにもどった。

 フロアの半分はすでに灯りが落とされていて、矢神がひとりで残業をしていた。真剣な顔でパソコンのモニターを見つめていたかとおもうと、急に顔を上げてこちらを見た。


「まだ残ってたんですか」
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