上司のヒミツと私のウソ
「矢神くんって、会社ではどんな感じなの?」


 突然、律子さんが割ってはいる。私はこのやりとりにうんざりしはじめていた。やっぱり関わるべきじゃなかったのかも。


「完璧って感じです。矢神課長は私と違ってエリートですから」

 冗談っぽくいったつもりだったのだけれど、二人からの反応がない。見ると、二人とも呆気にとられたような顔をしている。


「ふーん。そんなふうに見られてるんだ」と、律子さん。

「おれ、エリートなんて言葉は、あのひとにいちばん縁遠い言葉だとおもってた」と、マスター。


 そうか。この二人は裏の矢神しか知らないんだ。


「西森さん、矢神くんの高校時代を知ったらびっくりするわよ」

 そういう律子さんの眼は、なにか企んでいるようにも見える。


「少なくともエリートとはおもわないでしょうね」

「どうしてですか?」


 律子さんはうれしそうにニッコリ笑う。


「直接、矢神くんに聞いてみたら?」
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