上司のヒミツと私のウソ
「だから手伝うっていったのよ。新入りのあんたに資料が判別できるわけないもん」

「そんないい方しなくてもいいでしょ」

「手伝ってほしいなら素直にいえば。いい年して意固地になっちゃって、バッカみたい」

「……」


 図星なだけにいい返せない。


「ほらっ。さっさと片付けるからねっ。こんな辛気くさいこと、いつまでもやってらんないでしょーがっ」


 安田はパイプ椅子を片手でつかむと、奥の事務机の前に運んで座った。私もそれに習う。

 目の前には資料が山積み。


 でもきっと今日中には片付く。


「……ありがと」

 遠慮がちな声になった。安田は無視したけど、聞こえていることは間違いなかった。




 週明け、私は出社するとまっさきに矢神の姿を探した。

 やっぱりフロアのどこにも見あたらない。
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