202号室の、お兄さん☆【完】
 
「きっと、侵入したんだ」

皇汰は急いで、台所へ走った。そして、カレー鍋を頭に、背中に教科書を入れ、お腹には新品のまな板を装備した。
私も同じように装備し、フライパンを握りしめた。

皇汰はバスケットボールと、傘を握り、暗くなり出した外へ、音を立てずに飛び出した。

五月蝿い階段も、ゆっくりのっそり降りる。


――さっきの場所に、新聞の人は居なかった。

そして、花忘荘の入り口でキョロキョロと辺りを見回している。手には、スーパーの袋らしき物が。


そして、階段を降りている途中の私たちを見て、びっくりしていた。

……まぁ、頭に鍋なんて被ってたら驚くよね。



「ふてぶてしい野郎だ。俺らを見ても、また新聞を広げて読むふりを始めたぜっ」

階段から、皇汰がボールを投げるふりをすると、慌てて塀に隠れる。……新聞紙の穴から、此方を見てたんだ。



「もう我慢できねぇ!

おい、てめぇ、出てこいよっ」

まな板アーマーの皇汰が、階段を勢いよく降りだした。

「こ、皇汰!!!」

「ここには、俺の姉ちゃんが居るんだぞ!!! 不審な行動とるんじゃねー!! 姉ちゃんが不安がるだろ!!!」

皇汰……。
< 35 / 574 >

この作品をシェア

pagetop