君が好きだから嘘をつく
「楓!」

振り向くと英輔だった。
どうしたんだろう?何かあったかな?

「英輔、どうしたの?」

「ごめん、もう迎えに来た?」

「う~ん、今車探していたんだけどまだかな?」

広い駐車場を見渡しながら答える。鳥目なのでイマイチよく見えない。

「そっか。あのさ、連絡先交換できたらと思って。急いでるところごめんな」

「ううん、待ってね」

バッグからスマートフォンを探す。

「会社も近いしさ、向こうでまた会えたらと思ってさ。今度飯でも食べに行こうよ、まだ話したいことも沢山あるし」

「そうだね、私も連絡する。ちょっと待って」

話しながら連絡先を交換して登録する。
ちゃんと登録できたことを確認した。

「ごめんな、急いでいるのに引き止めて。今日は会えて本当によかった、ありがとう」

微笑みながら右手を出してきた。
私も右手を出してキュッと握手した、私も微笑んで。

「うん、ありがとう」

「じゃあな」

そう言うと英輔は私の手を握っていた手を解いたあと、手を振って笑いながらドアに向かって歩いて行った。英輔が中に入った姿を見て、私もまた駐車場に向かって歩き出した。

またキョロキョロと健吾の車を探していると、チカチカと奥の方が光った。
その方向を見ると健吾の車で、ライトをパッシングさせている。
『あっ!』っと声が出て嬉しくて笑顔になって、自然と小走りになる。
健吾に会いたい気持ちが、走りづらい高いヒールの靴の私を走らせた。
早く健吾の顔が見たい!そのまま運転席のドアの前まで走り窓を覗き込むと、健吾が窓を開けてくれた。

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