君が好きだから嘘をつく
「どうしたの?」

「ん?いや、何でもないよ」

「そう?」

何でもないようには見えなくて、私の顔は疑いの目になる。
そんな私の視線に気付いて健吾も横目でこっちを見てくる。

「何だよ~」

「別に~」

2人して可愛くない言い方をして、何となくいつもの空気を取り戻す。
私が健吾を見ながら少し笑うと、そんな私を見て健吾も前を見て少し笑顔を見せた。

「それで?結婚式と2次会どうだった?」

「うん、すっごく感動した。友達の結婚式ってくるものがあるよね」

「泣いたのか?」

「そりゃ~もう。付き合った年月の長い2人だし、学生の頃から本当に仲良かったしさ。挙式の入場の時から涙ボロボロだったよ」

そう、真奈美のウェディングドレス姿で感動して、久保くんと並んだ姿に感動して、真奈美の涙と久保くんの笑顔に何度も涙が溢れた。

「そんな綺麗な格好して泣いてる楓を想像すると笑えるな」

「ひどい!だって友達の結婚式だよ。涙出るでしょ!」

「ま~な。地元の友達はけっこういたのか?」

「うん、2人共小学校から一緒だから2次会は同窓会みたいだったよ。お互いの職場の人とかもいたけど、ノリのいい人達だったからすごく盛り上がっていたし」

2次会が始まった時はみんなで盛り上がっていたけど、途中からはあちこちで合コンみたいなノリになっていた。
佑香も結婚式で気になった人といい感じで話していたし、結果としていい2次会になったんだと思う。

「そっか。楓も楽しかった?」

「うん」

私が答えた後、健吾は何も言わなくなった。さっきと同じ感じで前を見たまま。
赤信号で停車し、ハンドルに腕を組むように乗せて顎をついて前を見ている。
私がそんな姿をジッと見ていると、視線をこっちによこした。

笑ってない、でも怒った顔でもない。
瞳だけが何かを言いたそうで、何故だか色気を感じて私の心臓がドキンとした。
すぐに信号が青になり、体を起こしてハンドルを握って車を発進させた。

「さっきの・・誰?」

少し走ったとこで前を見たまま呟くように聞いてきた。

「え?」

「さっき、駐車場まで楓を追いかけて来た奴」


さっき?健吾の顔を見たまま少し前の事を思い出す。
駐車場で健吾の車を探していた時、追いかけて来たのは・・英輔。

健吾見ていたんだ・・悪いことなどしていなかったけど、何だか気まずい気持ちになった。

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