君が好きだから嘘をつく
「知り合い?」

私に質問してきても無表情で、ただ前を見ている。
さっき私が駐車場で健吾の車に乗った時の空気と同じだ。

「うん、同級生」

「久しぶりの再会?」

「久しぶりっていうか・・10年ぶり。・・・ねえ、何か機嫌悪くない?」

とりあえず健吾の質問に答えてから、私の気になっていたことを聞いてみた。

「別に悪くないよ」

呟くような小さな声で、こっちをチラッと見ながらそう答えた。

「そう?そうかな~」

私も納得いかない目つきで言ってみる。
『機嫌悪くない』・・なんてことないよね。

「ホントだって。それで?外まで追いかけて来て、アドレス交換?」

「うん・・職場が近くだって分かって、向こうで食事でも行こうって話になって」

「へ~」

そう言ったきりまたしゃべらなくなって、重い空気。
私も英輔については話しようがなくて・・困った。
何となく罪悪感みたいなものを感じて、視線が泳ぐ。

「10年ぶりか」

「うん」

「仲良かったの?」

「・・う~ん、仲いい友達だった」

答えづらい質問に私の視線が下へ下へ落ちていく。

「元彼とかじゃなくて?」

「違うよ!」

その質問にはつい健吾の顔を向いて否定した。
私が突然大きな声で答えたから、驚いた健吾もこっちを向いたので一瞬視線がぶつかった。

「そっか・・」

「うん・・違う」

何だかややこしい話になってしまった。
確かに追いかけて来た英輔と連絡先を交換して、その後握手して別れた姿を健吾が全部見ていたなら勘違いされるかも。
他の人だったら適当に仲良かった友達って話を濁すけど、健吾には変な勘違いをされたくない。

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