甘き死の花、愛しき絶望
 加藤少年は、立ったまま、大きく身をのけぞらせたかと思うと……胸が張り裂けた。

 それは、文字通りの意味で。

 まるで、目に見えない大きな刃物でしなった身体を縦に半身に切られるように。

 皮膚が裂かれ、胸骨が切られて、ボキボキと音をたてて肋骨の白色が残りの皮膚を突き破った。

 それと同時に少年の口から断絶魔の絶叫がほとばしる。


 ぎぃゃぁあああああぁぁ!


 その身を裂かれる強い痛みは一瞬で、すぐに感覚器官が壊れたようだった。

 痛みを回避するのではなく、足りないからもっとくれ、とばかりに少年は少年は、残った力を振り絞って絶叫を続け、両手を大きく開く。

 そして、しかも。

 破壊されてゆく身体から、勢いよく吹き出した紅いモノは、血液ではなかった。

 それは、炎。

 一片三メートル以上ある炎の塊が、巨大な花びらとなり、少年の胸から吹き出したのだ。

 加藤少年の胸から出現した花びらは、何層も何層も重なって、それが紅蓮の炎の花に見える。
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