甘き死の花、愛しき絶望
 それは、ある意味最後通告。

 そして、裏返しの自殺抑制。

『僕の名前を知りたければ、生きて』

 なんて。

 白髪の少年の軽く聞こえる言葉の裏には、重い祈りもあったのに、花葬者の少年は、ヒステリックな声で笑い飛ばした。

「じゃ、オレは、知らなくていいや!」

「……そう」

「ん、で?
 あんたは、どうやって殺してくれちゃうワケ?
 カフンってさぁ、この花の形の痣(あざ)のことだろ?
 大怪我をしたり、病気にかかれば、一気に増えるけど、個人差があるからなぁ。
 オレは特別、頑丈だぜ?
 今、高層ビルから落ちてみても、半分ぐらいしか増えなかったし?
 しかも、もうほとんど消えてる。
 なのにあんたは、手ぶらだろ?
 ポケットに入るくらいのナイフじゃ、オレの肌は傷もつかないぜ?」

 黒髪の少年の言葉に白髪の少年は、軽く肩をすくめた。


「僕は、花を喰う虫だって言ったろ?
 君の口と僕の口を五秒間つなげれば、あとは三十秒で逝けるよ?」

「……げっ!」

 白髪の少年の言葉に、黒髪の花葬者は心底イヤそうな顔をした。

「オレは、ホモじゃねぇ!
 なのに、何だって人生の終わりに男とキスしなくちゃなんねえんだよ!」

「じゃあ、やめる? 死ぬのを」

「けっ!
 止めねぇよ!
 あんた、良く見りゃまあまあ、イイ顔してるじゃねぇか?
 ……百歩譲って、あんたが女だと思って我慢してやるぜ」

「そこは、無理に頑張る所じゃないと思うけど?」
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