甘き死の花、愛しき絶望
 首をかしげる白髪の少年に、黒髪の少年がぶんぶんと大げさに、首を振った。

「オレは、今日……ってか、今、ここで死ぬ。
 死神野郎が止めんなよ!」

「……僕は、死神じゃない。カフンを集めるただの虫だ」

 目を伏せる白髪に、黒髪はにやりと笑った。

「もし、オレを殺すことに成功したら『死神』って名乗れよ」

「なんで?」

「そりゃあ、もちろん。死神の方がカッコイイからさ」

 黒髪の少年は、あはははは、とヒステリックに笑うと白髪の少年に向かって手を伸ばした。

「さあ来いよ、白髪の死神!
 あんたとディープキスしたら、たったの三十秒でイけんだろ?」

「……決意は変わらないんだね?
 どうして、花葬者って言うヤツは、どいつもこいつも『こう』なんだか」

 口の中で呟く白髪の言葉に、花葬者の少年が眉を寄せる。

「ああ?」

「……いや、引き受ける、って言っただけだよ。
『舞台』も出来ているみたいだし、ね?」

 そう言って、白髪の少年が辺りを見渡せば。

 先程から彼らを遠巻きにしている野次馬化したヒトビトが、皆一斉に一歩下がった。

「……じゃ、最後に君の名前を教えてくれるかな?」

 白髪の少年の言葉に、黒髪の花葬者は、鼻を鳴らした。

「ふん、お前は名乗らない癖に、どうしてオレばかり……」
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