甘き死の花、愛しき絶望

「花葬者の花が咲いたら、君には全く何も残らないから、だよ。
 一応、高校の制服を着てるってことは、君にも親とか兄弟だとか……友達とかいるんじゃない?
 僕は君のコトを知らないから、ここで名乗らなくちゃ、君の死は、誰にも伝わらないかもしれない。
 永遠に、行方不明のまま、になっちゃうけど、それでいいの?」

「……」

「生徒手帳とか、髪、とか。
 お墓に入れてもらいたいモノを今、身につけているのなら、それも預かるよ?」

「……うわ、なんか死ぬのがぐっと、現実っぽくなってきた」

「僕は、最初から本気だったけど?
 ふざけるなら止めにして、君の前には二度と姿を現さないよ?」

 不機嫌そうに眉を寄せる白髪の少年に、黒髪の花葬者は、真剣な顔で手を振った。

「それは困る!
 オレは、城南高校二年一組 加藤 徹(かとう とおる)だ!
 花葬者に墓なんか無いことは知ってるし。
 今更残すモノなんて何もない……だから、はやく……オレを殺せ」

 自動車に跳ねられてみたし、電車にも飛び込んだ。

 そして、今回は、高層ビルから落ちてもみたけれど、痛いだけで、どうしても死ねないんだ。

 死ねないんだ。

 死ねないんだ。

 あの高さでダメなら、スカイツリーのてっぺんから落ちても死なないかもしれない。

 死ねないかもしれない……!


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