闇ノ花
伊東さんは、にこにこと微笑みながらお酒を飲んでいた。
絶対これ、何か裏がある笑顔だよ……。
私は、作り笑いを浮かべながら伊東さんの隣に座った。
「お酌しましょうか?」
「あぁ、芳乃さん。是非お願いします」
伊東さんはそう言うと、私の肩に手を置いて自分の方に引き寄せた。
うわ……ムリムリ。
これだから、伊東さんは嫌いなんだ。
反射的に背筋が凍りつく。
触らないでよ。
気持ち悪いよ。
近いよ。
酒臭いよ……。
誰か助けてよー……。
見回しても、みんなお酒を飲む事に集中していて、私になんか目もくれない。