闇ノ花
「それほどでもありませんよ」
一人で笑ってる……あんまり、調子に乗らないでほしいんだけど。
それに私、棒読みを意識して言ったつもりだったのに。
「芳乃さん……君は、どうして新撰組の元で働いているんですか?」
「それは……何となく」
なんかもう嫌になってきた。
こんな人に、未来から来たなんて正直に話すわけにいかないし……。
顔には作り笑顔を浮かべ、心の中では不貞腐れていると、伊東さんは、もっと私に近付いてきた。
両手で肩を捕まれ、私の耳元で何かを囁く。
「いずれ私達はここを出るつもりです。君も、こんな所の女中なんかやめて、私の所で働いてくれませんか?」
ムリに決まってるってば!
大体にして、何でこんな人について行かなくちゃいけないの。