【短編】聖なる夜の秘恋
「先生っ……」
声を漏らしている間に腕を引かれ、バランスを崩した体を背中からギュッと抱きとめられる。
プレゼントの箱が鈍い音を立てて地面に落ちる……。
「さっさと失せろ。俺がお前の腕をへし折らないうちにな」
頭上で彼が男らしい声が言い放つ。
茶髪の男は舌打ちをして夜の街にまぎれていった。
私は呆然としてたけれど、彼の腕の中でやっと我に返る。
それと同時に心臓がバクバクと暴れ出し、顔が一気に火照りだす。
「せっ、先生、ごめんなさっ……」
「寒いから早く乗れ。さっさっと行くぞ」
背の高い先生はもう道にとめた車の向こう側にいて、運転席に乗り込むところだった。
おまけに声は不機嫌そうで、私には目もくれない。
「はっ、はいっ」
私は下唇をかみしめて箱を抱えあげると、慌てて助手席に乗り込んだ。