【短編】聖なる夜の秘恋
“俺の女”
先生は私のことを確かにそう言ったはず。
普段、好きとも、私の下の名前さえもまともに言ってくれない先生が……。
私はそんなことに今もドキドキしているのに、ハンドルをきって、前しか見ていない彼は怒ったように口をつぐんでいる。
あんな人に絡まれた私に、あきれてるのかな?
恐る恐る横顔を覗いてもわからない。
車はイルミネーションの街並みを抜けて、平凡な街並みを走り抜けていく。
街灯だけになった道を走る車には、一定の間隔でしか街灯の光が差し込まず、一瞬一瞬しか先生の顔が見えなかった。
ううん、今だけじゃない。
見えにくい先生の気持ちに、私はいつだって不安になっているんだ……。
私はまた箱に視線を落とすと、泣きたいのを我慢して箱をきつく抱え込んだ。
せっかくのクリスマスが、もう台無しだね……。