【短編】聖なる夜の秘恋


無言のまま目的地に到着。先生のひとり暮らしのマンション。

部屋の前までくると、先生は黒革のキーケースから鍵を出してドアを開けた。

そんなスーツ姿の背中がすごく大人で、数歩距離を置いてみている私はまた距離を感じる。

先生はさっさと中へ入ってしまって、私はのそのあとへ続いた。

「お邪魔します……」

いまだに、小声でこんなことを呟きながら……。

先生は電気をつける。

余計な靴が出ていない玄関。真面目で綺麗好きな彼らしい。

入っただけで、先生の優しい香りに溢れている気がする。

私は割れ物を扱うようにあの箱をシューズボックスの上に置くと、静かに慣れないハイヒールを脱いだ。

足は痛いし、あの箱を見ると泣けてきそう。

だけど、玄関が閉まる音がしたのと同時に、先生が突然私の肩を掴んだの。


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