甘い恋の始め方
「きょう帰国するなんて知らなかった……」

連絡をくれなかったということは、私なんてどうでもいいのだろうか。

卑屈な考えが心を占め、眉根が寄って歪んだ表情になる。

「明日、話そうと思っていたんでしょ? こんな形で知られちゃうなんてね……」

「あの表情だと私に嫌悪感を覚えたんだろうなって……」

「そんなことないわよ! とりあえず話してみなくちゃ」

励ます加奈に理子は重く頷く。

「会議が終わってから連絡がないのよね?」

長く話し過ぎてそろそろ時間が気になってきた。

スマホで時間を確かめようとバッグの中を探すがない。そこでデスクの上に置きっぱなしだったことに気づく。

「スマホ、デスクの上に置きっぱなしだったわ。今何時?」

気持を入れ替えなきゃと、ほとんど手の付けられなかったランチを口にする。

「あと10分で15時だわ。そろそろ行こうか。気落ちしないで、理子。万が一振られた時は一晩中でも気が済むまでヤケ酒に付き合うからね」

こればかりは本人同士の問題。理子は背を軽く叩かれて加奈に励まされた。

< 151 / 257 >

この作品をシェア

pagetop