甘い恋の始め方
頭に手をやりうなだれていると、今までもくもくと仕事をしていた課長が理子を見た。

「どうかしたのか?」

「あ、いいえ。ちょっと行き詰まっちゃって」

「それならもう帰った方がいいぞ。デートはないのか?」

「ないですよ」

そう答えたとき、スマホが明るくなり悠也の文字が浮かび上がった。

1時間ほど前から着信を逃さないようにバイブ設定を解除していた。

「デートの誘いか? 鳴ってるぞ?」

課長はにやけた笑みを浮かべてから、自分のパソコンに顔を戻した。

呼び出し音がやけに大きく……理子は課長がいるここで出るべきなのか迷う。しかし切れたらもう二度と鳴らないかもしれない。そう思うと、理子はスマホの画面をタッチしていた。

「も、もしもし……」

『どこにいますか?』

とても簡潔な言葉に悠也の怒りを感じられる。

「……会社……です」

『これからそこへ行きます』

「え? ま、待ってください!」

慌てて声が大きくなってしまう。

< 153 / 257 >

この作品をシェア

pagetop