甘い恋の始め方
でも、この香りは悠也の思い出の香り。抱かれた時のことを思い出してしまう。

(今までの男たちのエッチがなんだったのか。ずっと不感症なのだと思い込んでいた。セックスは相手をつなぎとめる手段でしかなかった。それが、自分から彼を求めてしまう)

変わった自分に戸惑う。

(悠也さんを愛している……男らしく、優しくて……一緒にいて楽しい人……だけど、私の10分の1でもそう思ってくれているのだろうか……)

「はぁ~ 今日は何度も何度もそれに行きついて、自問自答の繰り返しだわ……」

お風呂から上がり、水を飲んでいるとスマホが鳴った。

悠也だ。

「もしもし」

『無事に仕事は終わった?』

「はい。今日はすみませんでした」

『そんな風に謝らないで。康子さんはがっかりしていたけどね。デザイン画を預かってきたよ。明日……そうだな、夕食を一緒に食べよう。一度、俺のところに来てくれる? その時にデザインを確認して康子さんに連絡をすれば喜ぶよ』

「……はい」

(本当に結婚してしまってもいいの?)

「……はい」

(本当に結婚してしまってもいいの?)

『じゃあ、明日』

「はい。おやすみなさい」

苦しい思いが湧き出てきて、淡々とした答えになる。

スマホを切ったあと、恋に臆病な自分に嫌気がさした。

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