甘い恋の始め方
お昼休憩時間になると、理子は壊れたスマホがバッグの中に入っているのを確認してから外へ出た。

携帯電話会社の女性スタッフに見てもらったところ、内臓のデータ含めてSDカードまでだめになってしまっているとのことだ。

バックアップは携帯会社に保存していたからほとんどの番号は無事だが、数日前に登録した悠也の番号はやはりわからない。

生グレに浸かってから、驚きでさっさと引き上げなかったのがいけなかったのだろうか。

新しいスマホを選び設定が終わると、残りの休憩時間が15分しかなかった。

簡単に食べられるコーヒーショップでホットドッグとカフェラテをテーブルの上に置くと、突然鳴り響いて慌てる。

買ったばかりで音の設定が最大だったようで、周りのサラリーマンたちにじろっと見られてしまった。

今まで登録されていた電話番号もないので、この番号が誰のものかはわからない。

とりあえずこの場所で出るのはひかえ、理子は電源を落とした。

電源を落としてしまってから、あの番号は悠也のものだったかも……と、後悔する。


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