いとしいあなたに幸福を
「返事は?」

「はい…」

「よし、お利口さんだ」

京を咲良に預けて退室させると、周は大きく背伸びをして息をついた。

「…いつものことながら、元気がよろしいですこと」

すると一部始終を傍らで眺めていた美月が、呆れたように小さく呟いた。

「ああ、俺に似てやたらと身体も丈夫だしな。風邪も滅多にひかないくらいだよ」

「そのようですわね」

「じゃあ美月、後のことは頼んで構わないか?」

「はい」

母の代に補佐官の見習いをしてきた美月は、仕事のことでは非常に頼りになる。

ただ、厳しい厘に指導されていた影響か、多少素っ気無い面が助長された気がしないでもない。

仕事は速いし正確だが、もう少し可愛げがあっても良さそうなものだ。

なんてことを考えながら周は自室に寄って、煙草の匂いが染み付いた仕事着から部屋着に着替えると京の元へ急いだ。



「あ、とーしゃま!」

子供部屋に入った途端、京は愛らしい笑顔を綻ばせた。

次いで、勢い良く周の足元に飛び付いてくる。
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