【短編集】あいとしあわせを祈るうた
時計の針は9時を過ぎた。
店は混雑のピークだ。
間仕切りで仕切られているから、隣席の雑音は気にならない。
…私はまだまだ全然イケるのに。
「お客様あ」
黒服のウェイターが私達のテーブルに近付いてきた。
「当店本日、3時間の時間制でしてえ。もうそろそろ、お時間なんすけどお」
あまりの忙しさにキレてしまったのか、茶髪の彼は不貞腐れた態度で言う。
かなり感じが悪い。
「あ、じゃ、出ます!」
店員を振り払うように杉本君は言った。
そして、「じゃ、さやかさん。行きましょうか?」
私に微笑み掛けると、伝票を掴み、立ち上がった。