面倒臭がりの異界冒険伝
咄嗟に振り返れば、観戦していた子分の方の男が杏奈を捕まえ、その首筋に短剣をチラつかせていた。
「お強いようだが…これで動けねぇだろう?」
「……っ…お姉ちゃ、ん…ごめんなさい……」
杏奈は震える声で悠奈に謝る。
「杏奈…。」
悠奈は腕を力なく下げて俯く。
戦いから外れていた二人を視界に入れることを忘れていた訳ではないが、杏奈はか弱いなりをして強いから大丈夫だろうと油断していた。
そう言えば杏奈、どんなに悪人でも優しいからつい手を出せないんだった。
動かないのを諦めと見たのか、男は高らかに笑った。
「ふははははは!なさけねーな、さっきまでの威勢はどうしたよ?」
悠奈に劣勢だった男たちが次々に耳障りとしか思えない下卑た笑い声を放つ中、悠奈は怒りを覚えるも冷静に状況を打破することを考える。
(……杏奈にナイフ向けられてる状況で下手に動けば幾らあの子が強かろうと危ないし。一度大人しく捕まっといて隙をつく方が得策かな…。)
そう結論を出して小さく息を吐くと、悔しそうな表情を作って男を見る。
「大人しくする…だから、その子には手を出さないで。」
「はっ、俺達を散々舐めてくれた割には、しおらしいじゃねーか…よっ!」
「……っ…」
無傷だった内の一人が、悠奈の頬に思い切り拳を入れた。
「お姉ちゃん…っ!!」
口の中が切れたのか少し血の味がしたが、この程度なら平気だろう。
(けど、後で絶対千倍返しだ。こいつと杏奈を捕らえてる奴は本気でボコッていいよね、きっと。)
内心でこんなことを考えてる悠奈に対して、杏奈の方がひどく取り乱してしまっていた。
杏奈が責任を感じることでもないというのに。