月の絆~最初で最後の運命のあなた~
「どうかしたの?」
いつの間にか、心配そうに狼呀の顔を見つめるマリアがいた。彼女は、意識せずに他人の感情を察知するらしい。
これでは、気遣いや思いやりを忘れられつつある今の人間社会では、暮らしにくいだろうなと狼呀は思う。
「いや、悪い。入ろうか」
「う、うん」
まだ心配そうなマリアに、心が温まる。
先に歩いて店の扉を開けると、優しいベルの音が室内に響いた。
「いらっしゃ……」
カウンターでパソコンを開いていた男が、ベルの音に顔を上げて固まった。
「お前……その顔、不気味だぞ」
あまりにも見慣れない顔に、狼呀まで固まった。
その言葉に、男はすぐに立ち直ったのか営業用の微笑みを引っ込めると、無表情になってパソコンを閉じる。
「って……狼呀じゃねえか。珍しいな、あんたが店に来るなんて」
「ああ、ちょっとな」
狼呀は、自分の体で隠れてしまっているマリアの腰に手を回すと、男に見えるように引き寄せた。