月の絆~最初で最後の運命のあなた~
「どうして……誰も分かってくれないの? あたしが、吸血鬼にならなくちゃいけないって」
彼女の声には、絶望がひそんでいた。
マリアの願いなら叶えてやりたいし、絶望を拭ってやれたらと狼呀は思うが、願いが願いだけに無理だった。
「マリアよりも、俺たちのほうが……未来に待っている結果が分かってるからだよ」
狼呀は少し体を離すと、横抱きに抱き上げてソファーに連れていった。
ゆっくりと座らせ、狼呀自身は床に座ってマリアの手を握る。
「どうして絆を手放した?」
「…………」
マリアは目を背けた。
「昨日はいい感じだったのに、今日になったら……ってことは、昨日のお兄さんが原因か?」
それしか思い浮かばなかった。
マリアの様子がおかしくなったのも、その時だ。
「吸血鬼にならなくちゃいけない理由……教えてくれないか?」