月の絆~最初で最後の運命のあなた~



「どうして……誰も分かってくれないの? あたしが、吸血鬼にならなくちゃいけないって」


 彼女の声には、絶望がひそんでいた。


 マリアの願いなら叶えてやりたいし、絶望を拭ってやれたらと狼呀は思うが、願いが願いだけに無理だった。


「マリアよりも、俺たちのほうが……未来に待っている結果が分かってるからだよ」


 狼呀は少し体を離すと、横抱きに抱き上げてソファーに連れていった。


 ゆっくりと座らせ、狼呀自身は床に座ってマリアの手を握る。


「どうして絆を手放した?」


「…………」


 マリアは目を背けた。


「昨日はいい感じだったのに、今日になったら……ってことは、昨日のお兄さんが原因か?」


 それしか思い浮かばなかった。


 マリアの様子がおかしくなったのも、その時だ。


「吸血鬼にならなくちゃいけない理由……教えてくれないか?」



< 243 / 356 >

この作品をシェア

pagetop