月の絆~最初で最後の運命のあなた~
絡ませている手を引き寄せて、手の甲に口づけてから、自分の頬に触れさせる。
どれくらい、そうしていただろうか。
静かな室内には、二人の規則正しい呼吸しか聞こえない。
もう、二度と二人の絆は繋がらないのかと、本気で諦めかけた時、ようやくマリアは口を開いた。
「昨日のアレ……見たでしょ? 兄さんがぼろぼろになって帰ってきたのは、昨日が初めてじゃないの」
マリアは深呼吸をした。
「何度もあって、母はおかしくなる直前だし、父もかなりまいってた。なのに……祖母は、可哀想だって言って怒らないし、警察に言おうと思っても本人が言えないとか言って何もしない」
狼呀は、ただ黙って聞いていた。
時折、慰めるように親指で手の甲を撫でたり、口づけたりはしたが、決して急かしたりはしない。