月の絆~最初で最後の運命のあなた~
「それから、同じ事の繰り返し。当たり前よね……警察にも相談しないで、されるがままなんだもん。相手は喜ぶでしょうよ」
その時の事を思い出しているのか、力一杯手を握ったマリアは、狼呀の手に爪を食い込ませた。
でも、気づいていない。
どこか遠くを見ていて、瞳は暗く陰っている。
「兄さんは相手の職業を……公務員とか言ってたけど、あの顔は忘れない。一度、見たことがあるけど、善良な人間じゃなかった。後ろをついて歩く兄さんが、あまりにも情けなくて吐き気がしたわ」
狼呀は、マリアが泣いているのかと思ったが、涙一つ浮かべていない。
泣いているのは、心だった。
そんなマリアの心をどうにか絆で包んで抱き締めるイメージを頭に浮かべる。
もう繋がってはいないが、わずかな変化は感じ取れた。