月の絆~最初で最後の運命のあなた~


 玄関の扉は閉まっていたけど、絢華さんはチャイムも鳴らさずに入っていく。


「冬呀! 連れてきたわよ」


 声をかけると、奥から顔を覗かせた。


「ああ、ありがとう。マリア、こっちだ」


 冬呀に示されたのは、入ってすぐのソファー。たしはルナを下ろした。


「わたしは、この子に服を着せてくるから」


 暖炉のあるリビングにあたしは通され、絢華さんは奥の部屋へと消えていく。


 残されたのは、あたしと冬呀。


「ココアで良かったかな?」


 木のテーブルにカップが置かれ、あたしは席についた。


 壁には、牛の頭蓋骨と見事な模様のタペストリー。


 暖炉の前には、たくさんのクッションとソファーがある。


 冬呀は独り暮らしをしていそうだけど、所々に置かれた調度品は、一人だけで使うものじゃないように見えた。


 失礼だと思ったけど、一通り眺めてから冬呀に視線を向ける。



< 303 / 356 >

この作品をシェア

pagetop