月の絆~最初で最後の運命のあなた~
なのに、いつもみたいな苛立ちはわいてこない。
「全員、君の両親を知る者たちだよ」
「全員ですか?」
「そうだ。中には、マリアの両親が名前をつけた者もいる。二人は、良きアルファ夫婦だった。全員が慕っていたんだ。あんなことがなければ、今も二人がこの群れをまとめていたはずだよ」
冬呀の顔には、こちらの胸まで痛くなるほどの悲しみが表れていた。
顔すら思い出せない両親。
でも、慕われていたということが、なんだか嬉しい。
「さあ、ここだ」
冬呀は持っていた鍵で、焦げ茶色の扉を開けた。
家の回りの草は綺麗に刈られ、花は美しく咲き誇っている。誰が見ても、人の住んでいない場所とは思わないだろう。
扉を開けた時にも、錆びた嫌な音もしないし、カビ臭い匂いもしなかった。